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三枝氏の経営小説4部作の第2弾「経営パワーの危機」の感想。経営者を目指す人はなるべく早い段階で読んだ方がいい良著。

今回は三枝匡 著の「経営パワーの危機 ~会社再建の企業変革ドラマ~」(日本経済新聞出版社)取り上げます。

経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

 

三枝氏のビジネス小説4部作「戦略プロフェッショナル」「経営パワーの危機」「V字回復の経営」「ザ・会社改造」のうちの2作目になります。

この本を読んで得られた一番の産物は、「事業全体を経営したことがあるか否かで、ビジネスマンとしての力量は全く異なる」ことを知れたことです。
部分に陥ることなく、事業全体を見通し、適切な判断をして行動する。
これは訓練をしないとできません。
しかし、その訓練は普通の平のサラリーマンだとする機会になかなか恵まれないです。
独立した事業部の事業部長や子会社の社長等の立場で得られる機会ということでした。
30代~40前半くらいで事業を回す立場を経験して、失敗も成功も一通り経験して、50代で本社の経営をするくらいでないと、世界で戦える経営者になるのは難しいようです。

まずはそのことを知れたことが大きかったと思います。
20代後半が係長(リーダー)、30歳前半は課長(マネジャー)、後半で部長(ゼネラルマネジャー)、40代で事業部長(エグゼクティブマネジャー)、50代で役員みたいな尺度で考えていたら、それはサラリーマンを脱しないのだろうな、と思いました。

もちろん、自分のなりたい姿が前提にはなりますが、もしあなたが企業の中でも、自分でやるにしても、経営者として人生を送りたいのであれば、そしてそれがグローバルに展開するくらい大きなものにしたいのであれば、勝負するタイミングは30代~40前半くらいで一度考えてもいいかもしれません。

そう思わされるくらい、この小説は説得力ある文章で、自分の脳を揺らしてきます。
リアリティがあるし、キャラクターも面白いし、何より戦略が立案され実行されその結果を読むわくわく感がたまりません。
電子書籍で通勤時間に読んでいたのですが、3日くらいで一気に読みました。
サラリーマン金太郎を読む人とかと似た気持ちなんでしょうか?
15年も前の作品ですが、今読んでも生々しさがあります。
自分もビジョンを実現したい人間として、経営者だったらどういう行動をとるだろうか?と考えながら読んでしまいました。

ストーリーは、新日本工業の社長の財津が、倒産間近の投資先の東洋アストロンに30代後半の伊達を社長として送り込み、会社を再建させるというものです。

戦略的思考が磨かれるストーリー展開

「経営パワーの危機」が良い点の1つは、戦略的思考の具体例を使いながらストーリーが展開することだと思います。

三枝氏の最も重要としている戦略「創って、作って、売る」は本書でも登場するのですが、実際に伊達が東洋アストロンの建て直しの際に、事業分析のために活用しています。
まず伊達は、特注品を売っている割に異常に低い利益率に目をつけます。
そしてその原因を確かめるために設計、製造、営業の各部署に足を運びます。
創って、作って、売る、のサイクルのどこに「フンづまり」を起こしているところがあるのかを確かめに行ったのです。
こういう具体例があると、自分が経営するときにも応用できそう、という気にさせられます。
それほどパワーを感じさせるツールだと思います。

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本書より抜粋

利益率を高め、赤字が解消されたら次は、売上を10億、50億円規模とどんどん上げないといけません。
しかし、そのときもイケイケどんどんで押すのではなく、一度現実に立ち戻り、必要であれば段階を踏むのです。
その判断の助けになるのが、戦略思考です。
下のような図は、単純ではあるが、その分社内の「共通言語」として役立ち、みんなのベクトルを揃える手助けをしてくれます
どこを目指すのか?そのためにはどういうステップを踏めばいいのか?
少なくても幹部全員がすっきりと語れるようにするために、戦略を可視化するのはメリットが大きそうです。

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本書より抜粋

 やけにリアリティのあるキャラクター描写

皆さんも会社に勤めていると、上司、先輩、同期、後輩等、様々な人と接すると思います。
その中には、ミステリアスで異常に優秀な人だとか、いつ仕事しているんだろうというくらい色んな人と話しまくっている人、結構上の人にはめちゃくちゃ丁寧なのに相手を見てぞんざいに扱う人とかいろんな人がいると思います。

「経営パワーの危機」もそういう人が出てくるので、「いるいる、こういう人・・・」という視点で引き込まれていくのです。

まずは町田常務。元々は東洋アストロンの創業者で社長だったが、経営を傾けてしまった張本人です。
日本有数の公害・環境分析器メーカーに勤めていたが、そこで有名大学や企業の研究所の人から特殊な装置の開発を頼まれることが多かった。
しかし、特殊装置は開発に手間がかかる割りには売上が伸びづらいので企業がGOを出さない。
そこで町田は彼らの助けになりたいと考え、起業したのでした。
なので、町田は完全に理系、技術屋さんです。
高飛車なタイプではないが、技術者として一流が故に、一定のプライドを覗かせる。
営業は好きではないので積極的には行いません。
社長から常務に移ったときの態度も嫌なのかどうかもはっきり見て取れないため、伊達からすると不気味さを感じる。
とかは、理系の技術者からのオーナー経営者にいるタイプっぽいなと感じました。

次に新しい営業部長の明石。本社の新日本工業の営業でトップクラス、流行のスマートな眼鏡をかけた男です。
この男はかなり政治力に長けていて腹が立ちます笑
社長から選ばれたことや本社の役員の名前をちらつかせて主張をします。
営業の際も開発の町田と意見が割れることもありけんかを始めてしまいます。
親分肌なので、部下とよく飲みに行き、営業部を「城」のようにしてしまいます。
部下の前で経営の批判をしたりするのです。
伊達を批判するためにけんかしていた町田に擦り寄ったりと大変です。
営業として力があるだけに、上も頼りにしていて、そして大きな組織なので政治力が大きく影響する世界ではあるんですよね。

直接目にしたことはないですが、こういう人っていそうだな、と思わされました。
三枝氏が、キャラクターの性格についても、経営的にどう影響するのかまで分析しているので、実地に即したリアリティあふれるキャラクターが描かれるのだと思います。

若き社長のサクセスストーリーは痛快

一気に読んでしまう最大の要因はこれかな、と思っています。
伊達社長の戦略がどうなるんだろう?成功するかな?とわくわくしてページをめくってしまうのです。
全1000ページくらいあるのですが、本当にあっという間です。
事件はたくさん起こります。
開発者7名が他の会社に抜ける、代理店が他社の商品に注力し始める、本社から送られた営業部長が社内バランスを崩し始める、絞って開発した製品がなかなか完成しない等々。
それでも、自分が立てて、皆で議論してできた戦略を信じぬく伊達社長に魅了されてしまうのです。
時にプレッシャーから不安になったり、時に成功体験から傲慢になったり、そんな姿に自分を重ね、自分もそんな経験をしてみたいという気持ちになるのです。
そして自分を重ねた社長が成功するとスカっとした気持ちになるのかもしれません。

ということで「経営パワーの危機」は、企業の中で経営をしたい人、自分で起業したい人には是非読んでもらいたい内容が詰まっています。
経営とはこういう世界なのかと自分の枠組みが広がるかと思います。
早く経営者としての決断をしてみたいという気持ちにもさせられます。
なるべく若いうちに知っておいた方がその後の選択肢が広がるな、と感じたので興味のある方は是非読んでみて下さい。

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三枝氏の「V字回復の経営」についての感想も書いています。
「創って、作って、売る」ことに重点が置かれた作品です。

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